安部龍太郎氏の『等伯』を読みました

安部龍太郎氏の『等伯』上下を読みました。

日本画の狩野派に対峙する長谷川派の創始者長谷川等伯(1539年生 1610年没)が主人公の小説です。

『日経』に2011年1月から翌年5月まで連載された長編です。

連載中に東日本大震災が起こりました。

安倍氏は本書の「あとがき」で、「この現実を前に小説家に何ができるのか。そんな疑問に直面し、無力感に押しつぶされそうになった。それでも何とか書きつづけることができたのは、数々の苦難を乗り越えて松林図の境地にたどりついた等伯の強さに触発されたからである」と述べておられます。

私も、等伯の苦難と強さ、そして自らを支え、時にはそのために犠牲になった人びとへの深い愛情に、強い共感をおぼえました。

興味深い発見もありました。作中、次のような問答がかわされます。

「力をも入れずして天地を動かす力が、和歌に、いえ、言葉にあるのでしょうか」
「ある。心と天地はもともとひとつのものじゃ。心が正しく動けば天地も動く」
「そのような悟りに、どうしたら達することができるのでしょうか」
「御仏の教えに身をゆだねよ。法華経を杖とも柱とも頼むがよい」

1843年に25歳の青年マルクスが書いた、『ヘーゲル法哲学批判』の序説に、次のような叙述があります。

批判の武器はもちろん武器の批判のかわりをすることはできないし、物質的な力は物質的な力によってたおさなければならない。しかし理論もそれが人民をつかむやいなや物質的な力となる。理論が人民をつかみうるようになるのは、それが人に訴えるように論証をおこなうときであり、理論が人に訴えるように論証するようになるのは、それがものごとを根本からつかむときである。

このふたつは、同じ境地だと思います。

400px-Hasegawa_Tohaku,_Pine_Trees[1]
                             国宝松林屏風図(部分)


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プロフィール

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Author:FC2USER441061ZKS
〇1949年旭川市永山生まれ 
〇正和小、明星中、旭川西高、宇都宮大学卒業  
〇家族 妻、2男(札幌と横浜に在住)、猫4匹(ねず、とら、みけ、ぎん) 
〇趣味 昆虫の観察と研究。ジョギング。
〇写真は、「さようなら原発全道1万人集会」(2012年10月13日。1万2千人が参加)の会場で写したものです

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